今、私は8月に長野県松本市で開催される「セイジ・オザワフェスティバル」で演奏する曲の暗譜に追われています。今回は、サイトウ・キネン・オーケストラのメンバーとしてブラームスの交響曲全4曲、さらにメンデルスゾーンとR.シュトラウスの作品のプログラム、そして室内楽コンサートではシューベルトの弦楽四重奏曲「死と乙女」を演奏します。
長年私たちを牽引してこられた偉大なマエストロ、小澤征爾総監督が逝去された今、私たちは彼が残した財産である「サイトウ・キネン・オーケストラ」をさらに発展させ、より良い芸術の担い手となるとともに、小澤さんが残したものをさらに若い世代へと伝える橋渡しとなるよう、しっかりその役割を果たさなければなりません。私もその一員となり得ることを願い、今回はフェスティバルが始まって以来最も多い7回のコンサートに出演します。
視力のない私は、当然ながら楽譜を見ながら演奏することはできず、すべての曲を暗譜することになります。その暗譜の元になるのは点字楽譜であり、私には「トニカ」という点訳グループが楽譜の点訳をしてくださっています。今回も、たくさんの曲をお願いしましたが、正確で丁寧な、心のこもった点訳で、私は大きな感謝とともに勉強を続けています。
オーケストラで演奏するためには、音を覚えるだけでなく、弓の上げ下げまでしっかり覚える必要があります。今年のコンサートマスターが弓使いを決め、先日その楽譜が送られてきました。私は、音だけを先に読んで勉強していましたが、昨日はブラームスの第3交響曲の弓使いの入った点字楽譜ができて、メールで送られてきました。これを紙に打ち出してみると30枚を越える量になります。しっかり勉強し、8月のフェスティバルに備えます。